報連相という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
社会人ならば、一度は耳にしたことがあるはずです。
報告・連絡・相談を一文字ずつとってできた言葉が、報連相です。
報連相は、新入社員が社会人になると必ず教えられ、それから定年で仕事を終えるまでずっと使います。
そのため、社会人になったら必ず身に着けたい仕事の基本動作です。
報連相とはなぜそんなに重要なのか、報連相ができないと何が起こるのか、実際に起きた失敗談など、報連相について詳しく解説してみたいと思います。
報告の報、連絡の連、相談の相、三つ合わせて報連相なのですが、新入社員に言わせると、「どれも同じじゃん!」となってしまいます。しかし、一つ一つは全て違います。
まずは、報連相の一つ一つの違いについて、ご説明します。
報告とは、「例の案件片付きました。」「この案件は進捗率50%です。」などと、上司や関係者に仕事の結果や経過を報告することです。
相手の耳に入れておくべきことを、簡潔に報告します。
連絡とは、「会議は3時開始です。」「例の案件は、いったんペンディングになりました。」などと、関係者に周知事項を知らせることです。
連絡内容に自分の考えや憶測、相談したいことなどは一切入れません。
事実のみを、正確に簡潔に連絡します。
相談とは、「この場合、どちらの手段を選ぶべきでしょうか?」など、仕事の悩みや判断に迷いが生じた時に上司や先輩、関係者にアドバイスを求めることです。
このように、報連相を並べて説明しても、新入社員たちはピンとこないという顔をします。
「報告や連絡、相談をするのは当たり前。なぜ、そんなに一生懸命説明しようとするのか?」と最初は不思議に思うかもしれませんが、これからご説明する話を聞けばその重要性と難しさを認識してくれることでしょう。
それでは、なぜそれが重要なのかを、以下で徹底的にご説明したいと思います。
報連相はなぜそんなにも重要視されるのでしょうか?
その重要性について、見ていきましょう。
報連相はなぜ仕事において重要なのか、そこにはただ一つの理由しかありません。
それは、仕事はチームで協力して行うものだからです。
人と人が集まって協力し合って仕事をするためには、お互いの意思疎通が必須です。
それぞれがバラバラに動いても、仕事内容が重複したり意識違いが起きたりして、仕事を成し遂げることなど不可能です。
複数人の人が集まって一つの仕事を成し遂げるためには、情報を集約しメンバー全員が共有する必要があります。そのために、チームメンバー全員が報連相を正しく行わなければならないのです。
情報を集約するチームリーダーに仕事の経過や結果を報告し、何か変更や知らせるべきことがあれば関係者に連絡し、仕事で困ったことがあれば上司や有識者に相談します。
そうやってチーム内で情報共有することの重要さを認識しやすくするために、報連相という概念の重要性が広がっていったのです。
考えてみれば、仕事を一人ですることなどほとんどあり得ません。
フリーで働いている一匹狼であっても、顧客や仕事を回してくれる人とコミュニケーションを取る必要があります。
一人で仕事をするのであれば報告も連絡も相談もする必要はありませんが、複数人で働くのであれば絶対に必要なのです。
報連相が重要である理由はチーム内で円滑に情報共有をするためでした。
では、なぜ報告・連絡・相談と三つに分けているのでしょうか?
報告と連絡と相談、どれも大して違いはないと思っていた人もいるかもしれませんが、明らかに全く異なる内容です。報連相という三つの分類に分けてひとくくりにしているのは、上司や関係者に話をしたいときに報告なのか連絡なのか相談なのかを明確にしておく必要があるからです。
例えば、新入社員が上司に、「例の件なんですけど、○○さんがこうしろって言うんですが、私はこうした方がいいと思うんですけど。」などと言ってきたとします。
これは、報告なのでしょうか?それとも、連絡なのか、相談なのか、全くはっきりしません。
これでは、話を聞いた方も、どう対処していいかわからないでしょうし、本人も報告なのか連絡なのか相談なのかを把握していないのでしょう。
これでは、本人も周りもどうしようもないのです。
「例の件、私はこうした方がいいと思うので、こうします。」というのであれば、報告です。
しかし、「例の件、○○さんがこうしろと言うんですが、私は違うと思います。どうしたらいいでしょうか?」なら、相談です。
「○○さんにそのやり方ではなく、私が考えた方法でやります。」という連絡をするなら、○○さんに連絡すれば良いことです。
報告ならばその事実を知っておきスケジュール表にそれを書き込みますし、連絡なら連絡事項を認識するだけですし、相談なら相手の話をじっくり聞いてアドバイスしなければなりません。
しかし、そのどれかが本人もわかっていない状況でグダグダと話されても、聞かされた側としても対処のしようがありません。
報告か連絡か、それとも相談なのかがわからないコミュニケーションは、回りくどくて仕事のコミュニケーションを阻害してしまうでしょう。
報連相という言葉には、報告なのか連絡なのか相談なのかを話す本人がしっかりと認識する重要性が示されているのです。
では、上手に報連相を行うためには、どうすれば良いのでしょうか?
報連相を上手く行うためのポイントには、次のようなものがあります。
それでは、報連相を行う上でのポイントについて一つ一つご説明しましょう。
前章でもお話ししましたが、人に話をする際にはそれが報告なのか連絡なのか、それとも相談なのかを明確にしておく必要があります。
報告とは、断定形で「こうします。」または「こうしました。」と述べることで、決定事項を人に話す場合は基本的に報告です。連絡は、仕事上で何か変更事項があった時や知らせるべきことがあった際に、事実のみを述べることです。
相談は、判断に迷った時や悩んだ時に、人に判断を仰いだりアドバイスを求めたりすることです。
こう説明すると、そんなこと当たり前じゃないかと思う人もいるかもしれません。
しかし、仕事で難しい状況に置かれたり複雑な問題が多発したりすると、何を報告し、何を連絡し、どう相談すれば良いのかわからなくなることもあります。そんな複雑な状況を整理し、これは最優先に報告、これは後で連絡しておけばよい、この件は早めに相談した方が良さそうだなどと自分の中で報連相の内容を形作ることは、とても難しいことなのです。
例えば、今日納品されるべき商品が交通事情によって届かなかったとします。これは、必ず報告すべき事柄ですが、報告だけで終わっても良いことではありません。関係各所に納品が遅れる旨を「連絡」し、上司にはどうすべきかの指示を仰ぎます。
上司から最も問題が大きくなりそうな顧客へ謝罪対応をしろと言われたら、どのような内容で謝罪すべきかを「相談」しなければなりません。その後、謝罪内容が決まったら「報告」し、対応結果についても「報告」すべきでしょう。
このように、報連相を行う上で最も重要なポイントとは、複雑な状況を解きほぐして素早く報告と連絡、相談のどれを用いるべきなのかを見極めることになります。
仕事をする上で、優先順位を正しく明確にしておくことはとても重要なことです。報連相でもそれは同様で、どの報告をすぐに行うべきでどれは後回しで良いのか、緊急度の高い連絡なのかそうではないのか、早めに相談すべきなのか後で良いのか、報連相の優先順位を明確にすることは非常に重要です。
報告すべきことや連絡、相談すべきことが持ち上がった時に、その都度優先順位を考えるのでは遅すぎる場合もありますし、迷いが生じることもあるでしょう。その時は、あらかじめ「これくらいの問題が起きたら、最優先で相談」「この程度なら優先順位は低め」などと、優先順位や緊急度をあらかじめ決めておくのが良いでしょう。
「大きなトラブルが発生した。」
「顧客に迷惑がかかる問題が発生した。」
「重要な納期に間に合わないことがわかった。」
などという重大な事態が起こった時には、何を置いてもすぐに上司に報告します。
具体的には、「大事な顧客である○○様がらみの報告は優先度高め」「よく出るエラーは実質問題が無いから、優先度は低めだが連絡だけはしておく」「自分の中で答えが出ない難しい問題は即相談だが、相談相手の忙しさにも合わせる」などということになります。
優先順位を考える上では、優先順位が非常に低く報告や連絡、相談しなくても良いということもあります。優先順位が低い事柄で上司や同僚の時間を取るべきではありません。
優先順位を守って報連相をすることは非常に重要なことなのです。
報連相とは、当然相手があっての行動ですが、では、報連相は誰にすべきなのでしょうか?
もちろん、報告すべき相手、連絡が必要な相手、そして、相談すべき相手です。
基本的には、報連相の相手は直属の上司ですが、関係者が多い場合は他の人にも報連相をする場合があります。その報連相をすべき相手を間違えてしまうのは、良い報連相とは言えません。
よくあるのが、「とりあえず関係者全員に連絡しとけ」というケースです。メールなどで、全員をTo、つまり宛先に指定して、報告や連絡をしてしまうのです。
これは、メールの使い方の問題でもありますが、複数の人を宛先にしてメールを出すと、出された方は誰にあてたメールなのかわからず結局誰も受け取らないということがあります。報連相もそうで、誰か一人を指定してメールをしないと、きちんと受け取ってもらえません。
多くの人が宛先に入っている情報は、「どうせ大した重要な情報ではないだろう」と軽視されがちです。ですから、一斉に大人数に周知すべき連絡事項でもない限り、必要最低限のメンバーに絞って報連相すべきです。
報連相をする相手は誰なのかを常に考えながら、連絡のやり取りが多すぎることが無いように相手を絞るべきところは絞って、かつ、不足が無いように相手を見極める必要があるのです。
報連相をする時の、話し方にもポイントがあります。
報連相をする際には、必ず結論から述べましょう。
「例の件、相手に打診したところ、OKをもらいました。しかし、こういう条件を出されてしまいましたが、それでよろしいでしょうか?」
などという風に、最初に報告すべきことを話すスタイルを心掛けてください。
そうすれば、報連相はスムーズに進みます。
特に、相談の時には、「例の件で相談したいのですが、よろしいですか?」と最初にざっくりとした相談内容と相談であることを話し、時間を取ってもらうようにしましょう。
相談の場合、話に時間がかかることがありますから、「相談です」と最初に宣言することで相手に心構えをしてもらう必要があるのです。
上司に報告をする際に、よく「顧客がこう言っているようなんですけど」「私はそうは思わないんですけど、こちらの商品の方がよく売れるそうです」などという、曖昧な表現を使い自分の主観と事実をごちゃまぜにした報告をする人がいます。
これは、悪い報連相のやり方です。
上司は事実を知りたいのであって、「~のようだ」「~と聞いている」などというあいまいな情報はいりません。また、自分の主観や考えを事実に混ぜると、結局実際は何が起きているのかがわかりづらくなります。
「こちらの商品が○○という売り上げを出しています。私はもっと違う商品の方がもっと売れると思います。」などと、主観と事実はきっちりと分けて報告します。
仕事において、誰もが自分の話をいつでもどこでも聞いてくれる、などということはありません。
みんな自分の仕事を抱えており、その合間を縫って人の話を聞くのです。
相手の状況を良く見極め、報連相のタイミングをわきまえなければなりません。
例えば、緊急に報告すべき重要案件は、相手の仕事を止めてでも報告すべきです。
一方、後で見ておく程度で良いという報告事項や連絡事項なら、直接話さなくてもメールで出しておくだけでも良いでしょう。
自分にとっては大事な案件で問題を抱えてしまい、すぐに相談したかったとしても、上司は多くの案件を抱えていて非常に忙しく、自分の案件はプロジェクト全体としてはそれほど重要ではないという場合もあります。
その場合、上司の状況を見極めて自分の案件を後回しにするべきかもしれません。
もちろん、自分の仕事が止まってしまうことになりますから、できるだけ時間を取ってもらうように努力します。
上司に状況を説明した上で別の仕事をして待っている、という調整も必要です。
報連相は、相手があってのことです。
ですから、相手の状況をよく見極めて、タイミングをわきまえることが重要なのです。
では、仕事の場面から報連相がなくなってしまうと、どうなるのでしょうか?
新入社員が実際にやらかしてしまった、報連相不足による失敗談をご紹介しましょう。
ある新入社員は、人見知りなのか、でしゃばるのが嫌いなのか、仕事ができないことを人に言い出せないのか、報連相をあまりしてきませんでした。
口を酸っぱくして「何かあったら言いなさい」と伝えていたつもりだったのですが、なかなかうまくいきません。
新入社員にも一人で担当する仕事を割り振るのですが、ほとんどの場合自分一人でやりきることは難しく設定されています。困った時にどのように先輩や上司とコミュニケーションを取って困難を乗り切っていけるかということも、社員教育の一環だからです。
その社員の特徴として、どうでもいい報告や「できた」という成功した報告は素早く報告するのに、「うまくいかない」「だめだった」という報告が全く上がってこないというものがありました。
誰でも、うまくいった報告はしたくなるもので、できなかったという報告はしたくないものです。
しかし、仕事でそのようなことは言っていられません。
むしろ、ダメだった、失敗した報告ほど早くしてくれないと、問題が大きくなってしまいます。
すぐに相談すれば何とかなるものを、上司や先輩は話しかけづらいのか相談する勇気が出ない、またはプライドが許さないなどというちっぽけな問題のために、もっと大きな問題を生んでしまうのです。
新入社員の時には特に、「報連相はすぐに」を心がけましょう。
報連相をする際には口頭で必ずすべきということはなく、メールでもOKというケースもあります。
例えば、多くの人に連絡事項を周知する場合などです。
このメールでの報連相の際に、一方的に送り付けてそれで終わりという人がいます。
メールは送っても相手が必ず見ているとは限りません。承諾や確認済みの返事ができる機能を利用すれば、相手からメールを見て確認したことを確認することができます。
しかし、そのような機能を使うこともなく、ただ一方的にメールで相手に情報を送り付けてそれで報告した気になっている人というのは、意外といます。
「メールは送ったでしょう。見ないのは、あなたが悪い」というスタンスなのです。
確かに、仕事上のメールは必ず確認しなければなりませんが、出張で不在、会議が立て込んでいた、他に重要な仕事があったなど、必ずしもいつもメールを確認できる状況にあるとは限りません。
また、重い相談メールをどんと送って、「相談に乗って下さい」という人もいます。
相談の場合、しっかりと相手の話を聞いたうえで一緒に考える時間が必要ですから、受けてすぐに相談に乗れるとは限りません。
それなのに、長々としたメールで相談を一方的に送り付けてくるのは、非常識です。
メールで報連相をしたら、返信が無い場合は「見てくれましたか?」などと後でフォローすることを心掛けましょう。
報連相についていろいろとご説明してきましたが、ただ上司や関係者に報告、連絡、相談をするというだけのことなのに、実に様々な注意点やすべきこと、してはいけないことがあったと思います。
人とコミュニケーションを取るということは、難しいことなのです。
では、どうしたら報連相が上手にできるようになるのでしょうか?
上手にできるようになるために日ごろから気を付けておきたいことや、コツについてお話しします。
仕事は、先輩や上司のやり方を見て盗むのが最も良い方法です。
生のお手本が身近にあるのですから、利用してしまいましょう。
報連相について人から学ぶためには、一緒に働いている先輩のやり方を参考にするのが良いでしょう。先輩の上司への報連相の仕方を注意深く見てみましょう。
先輩は簡単な報告や連絡ならメールで行い、グループ全体に関わることならCcでグループのメーリングリストをつけることを忘れないようにしているはずです。そして、重要な報告や相談事の場合、メールで簡単に終わらせることはありません。
注意深く見てみると、まずは上司に口頭で「実は・・・」と重要な要件について結論と全体像を伝え、後で時間と会議室を取ってじっくりと話をしているでしょう。時には、上司の機嫌が悪い時に悪い報告は上げず、機嫌が良い時にすかさず報告しているというテクニックも使っているはずです。
このように、報連相の内容によって、手を変え、品を変え、最も的確なやり方をしているはずです。
ぜひ、参考にしてみてください。
報連相を円滑に進めるポイントは、日ごろから周りの人たちや上司と信頼関係を築いておくことです。普段あまり話さないのに、相談事の時だけ話に言っても親身に対応してくれるとは思えません。
また、自分の上司はどんな風に話を切り出されるのが好きなのか、上司の性格や特徴を知ることもできます。ある上司は「面倒だから全部メールにして。ちゃんと読んでおくから。」とメール推奨派で、他の上司は「メールは読むのが面倒。直接話すのが好き。」と直接対話派かもしれません。
日ごろからコミュニケーションを取っておくことで、報連相は格段にしやすくなるのです。
報連相を頻繁にする相手は、直属の上司です。
あなたは、自分の直属の上司がどのような人かを知っているでしょうか?
怒りっぽい、穏やか、体育会系で熱い、文化系でおとなしい、理系で理論武装が好き、文系で情緒的、メールで意思疎通をしたいタイプ、直接話したいタイプなど、いろいろな上司のパターンがあります。報連相をする時に、上司の性格パターンに合わせて対応を変える必要があります。
体育会系で熱いタイプにおとなしく小さな声で控えめに報告すると、「何だ!元気がないな!聞く気がおきんぞ!」などという理不尽なことを言われるかもしれません。
この手のタイプは、元気よく報告すべきです。
理系で理論武装派なら、メールでこまごまと理論展開をした長い文章で報告するのが吉ですし、直接話をしたいタイプなら必ず上司の席まで言って口頭で話をしたり、廊下で会った時に呼び止めて気軽に話してしまったりしても良いでしょう。
このように、上司の特徴一つで、報連相のやり方は千差万別です。
自分の上司の特性を早くつかみ、それぞれのタイプに合った最も効果的な報連相の方法を取るようにしましょう。
報連相ということについて説明しようとすると、とても長い文章になってしまいました。
それほど、報連相とは仕事において重要なことだということです。
チームを組んで仕事をする以上、報連相ができないとチーム内のコミュニケーションを円滑に進めることができません。
しかも、人とのコミュニケーションですから、こうすれば正解という模範解答はなく、その都度相手や状況に合わせて変えていかなければなりません。
新入社員として会社に入ったら、先輩のやり方を見たり何度も失敗したりしながら、自分なりの報連相のやり方を確立させてください。
株式会社インフランディング マネージャー
日本電子専門学校ネットワークセキュリティ学科卒業後、システム会社に入社。
Cisco Systems TAC、バックパッカーを経て、インフランディング入社。